「……は?」
「そう素っ頓狂な声を上げるな、息子よ。」
「いやいやいや、どう言う事だよ、それは!!」
「どうもこうも、そのままの意味だよ、今回はお前が行って来い。」
「なんで?!」
「なんでも何も、何事も経験さ、ニアリー。」

……それってただ単に、自分が行くのが面倒臭いから息子に押し付けてるだけじゃないのか?
俺はそう思っては見たものの、結局口には出さずに(親父は1度言った事はテコでも変えやしねぇからな)そ のまま親父の部屋を追い出された。

世界征服という厄介な任務を押し付けられると同時に。






■職場体験■






「職場体験〜?」
「……だとよ。」
親父に言われた事の一部をフローラに話すと、案の定奴も同じように素っ頓狂な声を上げた。
「フローラ、お前行けよ。」
「やだね、お前が言われたんだからお前が行けよ。」
「何だってそんな面倒臭いコトしなくちゃなんねえんだよっ。」

そう、俺は今さっき魔王である親父から
『今回は職場体験だ。ニアリー、お前が世界征服を企んできなさい。』
と言われて部屋からつまみ出されたばっかりなんだ。

世界征服を企んで来いといっても、実際に征服するわけじゃない。
魔族の力を持ってすれば人間界の征服なんてちょろいモノなのだが、それじゃあ世界中がそれこそ大変な 事になってしまう。大体魔族だって人間がいなくなったりしたら暮らして行けなくなるんだからな。

人間の魂(それを食料にしている奴が大勢いる)はもう手に入らなくなるし、人間界で人間の頼みを聞いて 稼いでいる奴だっているし。

じゃあなんで世界征服企むのかって…まあ、それも仕事のうちだよ。
とにかく、世界征服するって言っても本当に征服するわけじゃなく、人間界を適当に騒がして、その中で人間 達の選んだ勇者に首尾よく滅ぼされるっていうのが筋というか、決まりなんだよ。

やってらんないだろ?わざと負けないといけないんだぞ?
かったるいしめんどくさいし、だから親父も俺に押し付けたに違いない。

「ほらニアリー、征服するんだったらどの国にするか決めておかないと。」
そう言って地図を広げているこの無責任男、コイツはフローラだ。
フローラって言えば女の名前なのだが、コイツは男。
…とは言っても俺も大分長い間、こいつを女だと思いこんでいたんだがな。
見た目はれっきとした男、中身も男、しかし俺はコイツが女だと散々言い聞かされてきた。
………ていうのも俺が子供の頃に、『妹が欲しい』なんて親父に言ってしまったからなんだが。まあ、それは それで過ぎた事だし、いいさ。
とにかく俺とフローラは紆余曲折あって、今はすっかり仲良し、なんて言うか結婚までしたしな。

男同士だけど。



まあいいじゃん?好きなんだし。





ああ……っと、話しが脱線しかけてるな。世界征服の話しだっけ。

「お前、軽く言ってくれるけどなあ…。」
「いつまでもぼやいててもはじまんないだろ?ほら、腹くくんないと。」
「でもさぁ……」
いつまでもぼやぼやと文句を言っている俺の背中を、フローラは無責任にもばしばし叩く。
「いいから諦めろよニアリー、女々しいな。」
「お前に言われたかない。」
「んだと?!」
「大体フローラ、征服の下準備に何年かかると思ってんだ。」

そう、俺が渋っている理由のひとつにはそれがある。
人間の時間の流れで言えば最低でも20年くらいは考えておかないといけない。

「あぁ……たしか、前回父上が征服に行ったのはエシャロットだったか?」
「そうそう、その流れで確か息子殺して。」
「オバ様がそいつを復活させて、炎と氷の魔剣渡して……。」
「で、成長したそいつ等に倒されたと。」

その工程でかれこれ15年近く費やしているわけだ。

「そう言えば…。」
「ん?」
「前回魔王を倒した英雄って、ゴクドーなんだよなぁ…。」
「ああ、昔のお前の仲間ね。」
ゴクドーとその相棒ルーベットとは、まだ人間界にいた頃(今でもちょくちょく遊びに行くが)一緒に旅をした事 がある知り合いだ。
あの二人まだ生きてるし、魔王退治の勇者やってる事だし、下手したらあの二人とやりあう派目になるかも しれないんだよな。
ゴクドーはいいがルーベットちゃんと戦うのはちょっと気が引けるな、ほら、俺ってフェミニストだし?
しかもルーベットちゃんにならわざと負けてやってもいいが、ゴクドーに負けるのは例えわざとでもなんか許 せん!!断じて許せん!!

「……なんか、すげぇやる気がなくなってきた…。」
思わずため息をつく。するとすかさずフローラが口を挟んでくる。
「前からないじゃんか。」
「うるせぇ。」
と、こんな堂堂巡りで、事態はなかなか発展しないかのように思われた。

おれが、あの事に気付くまでは。





「……ん?待てよ?」
と、そこで俺はある事に気がついた。
「もし俺が征服を企むんだったら、誰が勇者を導く役になるんだ?」
確か魔王である親父が世界征服を企んだ時、いつもお袋が邪魔をしにかかったはずだ。
つまり、魔王の役目が俺になった時に代わりにその役につくのは……。

「………フローラ、お前じゃねぇ?」
「え?」
「勇者を導く役、お前になるんだろ?」
まさかお袋が出て来たりはしないはず。
つまり、フローラだ。

「えぇ?!俺か?」
「そうだよ、お前だよ。」
「なんだよ、めんどくせぇなぁ。まあ、ニアリーを倒すってのは、面白そうで良いけどさ。」
「なんだと?!」
生意気なこと言いやがって!!
と、俺がなにか言い返そうとした時。



「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「んな、なんだ、どうしたフローラ。」

突然フローラが何かを思い出したかのようにでかい声を上げて飛びあがったもんだから、俺も飛びあがっちまったよ。
悪態をつくのも忘れてフローラに話しかけると、奴は涙眼をしながらこっちを振り返った。

「……おれ、オバ上の役やるんだよな?」
「俺が魔王やるんならな。」
俺がそう答えてやると、フローラはかなりギクシャクした動きでこちらに首を向けると、言った。




















「ってことは、あの雑巾みたいのに扮装しなきゃなんないのか?」










……………………っは!!

そうか!!そうだよな、って言うかそうだな。
フローラが雑巾ババアならぬ雑巾ジジイの役をやるのか!!
よっしゃ!!断然面白くなってきたぞ!!

さすがのフローラもあの雑巾に扮するのは嫌だったらしい。本気で泣き出しそうな顔で俺にすがってくる。
「ニアリー!!やっぱ止めよう!!俺魔王役やるよ!!」
「へっへっへ!!譲るわけないだろ!!俺だってあんな雑巾は嫌だよ!!」
「ニアリー!!」
「お前には雑巾がお似合いだこのヤロー!!」
どたばたと騒がしく騒ぎ始めた俺達は、雑巾役を押し付け合いながら暫くケンカをしていた。

どたばたどたばたどたばたと、そりゃあもう騒がしく……
























「誰が雑巾じゃと?」

ふいに、フローラと取っ組み合う俺の首筋に吐息を吐き出すような声が掛かけられ、首筋から背筋にかけて一気に鳥肌が立つ。
「「……っっ!!!!」」

あんまり騒いでいたから、誰かが部屋に来ているのに気付かなかったんだよ。
「お…。」
「お…。」
俺とフローラはそろって声のした方を向くとそこには案の定。
「お袋?!」「おばうえ?!」

そこには、先ほどの話題の中心、雑巾ババアこと闇の女王であるお袋が立っていた。

……ヤバイ、顔は笑っているが目が思いっきり据わっている。
相当怒ってるな、これ。

「ニアリー、フローラ、……なんの話しをしとったんじゃ?」
あくまでもにこやかに、お袋は話しかけてくる。
しかし俺はその声を聞いただけで背筋が凍るのを感じた。
「ぇ…ええ、世界征服について…。」
「ほう、それは良い事じゃ………。して、」

来た!!来る!!間違いなく!!

「雑巾とは、誰の話しじゃ?」

「フローラ!!逃げるぞ!!」
「ぇ…ちょ、ニアリー!!!」
俺は質問には答えずに、フローラの手を取って一目散に駆け出した。
「待て!!このバカ息子!!!!」

こんな怒っているお袋を相手にしてると、命がいくつあっても足りないさ。
経験上ここは逃げた方がいいと知っている俺は、すぐさま駆け出していつもの逃走コースをフローラと共に走った。
途中にいたお目付け役のジンを張り倒して、庭に繋いであるペガサスに跨ると、手綱を握って外に飛び出す。





「いいのかよニアリー。」
「ん?何が?」
俺の後ろに乗っているフローラが、心配そうな声を上げる。
「いろいろさ。ジン張り倒してきちゃったし、おばうえ怒らしてきたし、そもそもどこ行く気だよ?」
「そうだな、このまま人間界にでも行くか?」

とは言っても、人間界を征服する気などサラサラない。

「どうせ親父だってまだ引退って歳でもねえんだ。このまま暫くトンズラここうぜ?」
なんだかんだ言っても、人間界には顔が広いからな、俺。

「……そうだな、それもいいかもな。」
「よっし決まりだ!!職場体験なんてやってられっかー!!」


そうと決まればサボりだサボり!!
こうして、魔界の空を人間界に向かって走らせたのだった。

Fin
………てへっ。(何?!)
特に後書きで挽回するつもりはございません(開き直り)
たまには良いんじゃないですか?こういうのも。って言いながら、こういうのばっかりな気もしますが(汗)。いえいえ。いえいえ。いえいえいえい。いえい。
てか、闇の女王キャラ違いません?しかして私、オバハン言葉って大好きなんです。
尊大な態度は言葉からって言いますしね(言いません)。
雑巾バーサンはあまり好きではないが、闇の女王は大好きです。美人だし。








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